2012年7月3日火曜日

モーツァルト人気曲トップ40

2006年にイギリスのラジオ局「クラシックFM」がモーツァルトの人気曲トップ40を選んだ。すでに元のページはなくなっているが、あるブログに転載されていたので紹介したい。なかなか玄人好みのランキングになっているが、モーツァルトの魅力のエッセンスをつかむのには最適だ。

モーツァルトの曲は、いま流行りのどの歌手の曲よりも有名だ。その証拠に、このランキングの20位くらいまでなら、誰もが聞いたことのある曲だと思う。

  1. Clarinet Concerto in A クラリネット協奏曲イ長調 K.622

モーツァルトが最後に書いた協奏曲にして、彼が書いた協奏曲のなかで最も有名なもの。アンサンブルの完成度が高く、美しい。もともとバセットホルン協奏曲だった自筆原稿は消失し、編曲されたものがクラリネット協奏曲として親しまれている。

2. Requiem レクイエムニ短調 K.626

その道の人の間では「モツレク」と呼ばれる。映画『アマデウス』のなかで印象的な使われ方をされ、当時大ブームを巻き起こした。モーツァルトはこれを完成することなく死去したので、第三者によって手を加えられて完成させられたものが聞かれている。

3 Ave Verum Corpus モテト「アヴェ・ヴェルム・コルプス」K.618


4 Piano Concerto No 21 in C major ピアノ協奏曲第21番ハ長調 K.467


5 The Marriage of Figaro 歌劇「フィガロの結婚」 K.492


バッハの魅力がカンタータにつまっているとすれば、モーツァルトの魅力はオペラにつまっている。彼の初期のオペラにおいて、オケは歌の伴奏くらいの役割しかなかったが、ここではオケが歌手と共に大活躍する。

6 The Magic Flute ジングシュピール「魔笛」 K.620

もっと順位が上でもよいKV620、Die Zauberflöte。「笛」を「てき」と呼ぶのは「魔笛」の場合くらいだと思う。それはどうでもよいが、物語のなかで活躍するのは魔笛よりも魔法の鈴の方。劇中、非常に有名なソプラノのアリアがある。

7 Laudate Dominum 証聖者のための盛儀晩課(ヴェスペレ)ハ長調 K.339より「ラウダテ・ドミヌム」


8 Cosi fan Tutte 歌劇「コシ・ファン・トゥッテ」 K.588




9 Flute and Harp Concerto フルートとハープのための協奏曲ハ長調 K.299(K6.297c)

フルートとハープの組み合わせという珍しい協奏曲。両楽器の甘い響きがフランス風に奏でられる。

10 Eine Kleine Nachtmusik セレナード第13番ト長調「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」K.525
死ぬほど有名なこの曲は、一般に「小夜曲」と訳されるドイツ語タイトルがなぜかそのまま使われている。

11 Clarinet Quintet in A クラリネット五重奏曲イ長調 K.581

12 Mass in C minor "Great Mass" ミサハ短調「大ミサ」 K.427(K6.417a)

13 Symphony No 40 in G minor 交響曲第40番ト短調 K.550

14 Piano Concerto No 20 in D minor ピアノ協奏曲第20番ニ短調 K.466

15 Exsultate Jubilate モテト「エクスルターテ・ユビラーテ(踊れ、喜べ、幸いなる魂よ)」 K.165(K6.158a)


16 Horn Concerto No.4 ホルン協奏曲第4番変ホ長調 K.495

17 Piano Concerto No 23 in A major ピアノ協奏曲第23番イ長調 K.488

この第二楽章のピアノのメロディーは誰もが聞いたことがあると思う。日本の歯医者さんでよく流れているような曲。

18 A Musical Joke ディヴェルティメントヘ長調「音楽の冗談」 K.522

19 Don Giovanni 歌劇「ドン・ジョヴァンニ」K.527



20 Piano Sonata No.11 in A major ピアノソナタ第11番イ長調「トルコ行進曲つき」K.331(K6.300i)

この有名なトルコ行進曲は「ピアノソナタ第11番イ長調」の第三楽章。これが作曲された100年ほど前、ウィーンがオスマン帝国に包囲されたときにトルコより伝わった軍楽隊のマーチがモチーフになっている。

21 Sinfonia Concertante in Eb major for Violin & viola ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲変ホ長調 K.364 (K6.320d)

22 Symphony No 41 in C major "Jupiter" 交響曲第41番ハ長調「ジュピター」K.551

23 Bassoon Concerto ファゴット協奏曲変ロ長調 K.191(K6.186e)

24 Coronation Mass K317 - Kyrie ミサハ長調「戴冠式ミサ」 K.317より「キリエ」

25 Andante in C major for Flute & Orchestra フルートのためのアンダンテハ長調 K.315(K6.297c)


26 Violin Concerto No.3 in G major ヴァイオリン協奏曲第3番ト長調 K.216

27 Horn Concerto No.1 ホルン協奏曲第1番ニ長調 K.412/514(K6.386b)

28 Horn Concerto No.3 ホルン協奏曲第3番変ホ長調 K.447

29 Symphony No 39 in Eb major 交響曲第39番変ホ長調 K.543

30 Violin Concerto No.5 in A major - 1st movement ヴァイオリン協奏曲第5番イ長調「トルコ風」 K.219より第1楽章


31 Flute Concerto in G major - Slow (2nd) movement フルート協奏曲第1番ト長調 K.313(K6.285c)より緩徐(第2)楽章

32 Serenade in D major "Serenata Notturna" セレナード第6番ニ長調「セレナータ・ノットルナ」 K.239

33 Symphony No 35 in D major "Haffner" 交響曲第35番ニ長調「ハフナー」K.385

35番以降の交響曲は人気が高い。これは、二つ目の「ハフナーセレナーデ」として作曲されていたものが、交響曲に手直しされたもの。第四楽章の主題は、そのころ初演された歌劇『後宮からの誘拐』から取られている。

34 Oboe Concerto in C major オーボエ協奏曲ハ長調 K.314(K6.285d)

35 Piano Concerto No 24 in C minor ピアノ協奏曲第24番ハ短調 K.491


36 Gran Partita Serenade セレナード第10番変ロ長調「グラン・パルティータ」 K.361(K6.370a)

37 Divertimento in D major K136 ディヴェルティメントニ長調 K.136 (K6.125a)

38 Horn Concerto No.2 ホルン協奏曲第2番変ホ長調 K.417

39 Solemn Vespers K.339 - Dixit Dominus 証聖者のための盛儀晩課(ヴェスペレ)ハ長調 K.339より「ディクシット・ドミヌス」

40 String Quartet in Bb major "The Hunt" 弦楽四重奏曲第17番変ロ長調「狩」 K.458


2012年6月23日土曜日

バッハ:ゴールドベルク変奏曲 by グールド(1981)

1981年のこの録音は、はじめて聞いたときは55年の録音に比べてつまんないと思った。ところが、それから15年たって聞いてみると、これがすごくいい。というか、これは奇跡的な名盤としかいいようがない。

まず驚くのが、音の軽さだ。手首にほとんど力が入っていないかのようなとても軽いタッチで弾いている。けれど、それは「軽い演奏」ということではまったくなく、早いところでは明るい気分を、ゆっくりしたところでは落ち着いた気分をそれぞれ感じさせる。

55年版では、どこか若き才気のほとばしり、といった感じの演奏だったが、81年版では曲自体への新たな解釈をもとに、じつに緻密な演奏をしている、という気がする。たとえば、ここのページを見てほしい。

ここでは、宮澤淳一の論文において、81年版でグールドが、「一定のパルス(拍子を刻む一定の時間間隔)を設定し、全ての変奏において、拍子(を決める音符の音価) がそのパルスと等価または整数比になるように拍子を刻む速さを設定している」 ことが指摘されていると言及している。

要するに、すべての変奏に共通の早さの基準を設けて、それを楽譜ときっちり対応させながら弾いている、ということだろう。一見すると、とても自由に弾いているようにも見えるが、しかし実はものすごく自分を律しながら弾いているわけだ。こうしたアプローチ方法は55年とは明らかに違う。

タッチの強弱も81年版の方が明らかに均衡がとれていて、右と左、一音一音の強弱がとても均整がとれている。違うのは、早さだけではないのだ。

グールドがどうやって81年のこの版を作ったのかがよくわかるインタビューがあった。




55年の演奏もすごいが、81年の演奏は、彼がただの若き天才にとどまらず、進化し続けていたことがわかる。天才がエゴを超えて見事に成熟し、彼の孤高の表現となる作品を最後に生み出した。驚きなのは、彼のその才能に見合うだけの作品をバッハというこれまた天才作曲家が残していた、ということだ。


バッハ : カンタータ第56番&第82番 by フランス・ブリュッヘン

フランス・ブリュッヘン指揮でエグモントがバスの『カンタータ』第56番と第82番。1977年の録音。


BWV56「我、喜びて十字架を背負わん」は三位一体節後第19日曜日用に作られた曲。解説はこちら

BWV. 82の「我、満ち足れり」は聖母マリアの潔めの祝日のために作られた曲。ルカ伝2.29にあるシメオンの「満ち足りて死を思う」という言葉がテーマとなっており、半ばの変ホ長調のアリアでは、「まどろめよ。疲れし眼(まなこ)/穏やかな幸いをもて目ぶたを閉じよ」と歌われる、「まどろみのアリア」と呼ばれる名曲。解説はこちら。

エグモントは語りかけるような歌い方で、上手に感情を込めて歌っており、説得力がある。たとえばこの曲の感情の動きを聞いてほしい。


これはバッハのカンタータの名演、名盤だ。

Pergolesi, La Serva Padrona by Collegium Aureum

コレギウム・アウレウム合奏団によるペルゴレージの『奥様女中』の録音。あらすじはこちら

ソプラノはマッダレーナ・ボニファッチョ、バスがジークムント・ニムスゲルン、そしてコレギウム・アウレウム合奏団の演奏。フッガー城糸杉の間で1968年に録音された。

録音年代は古いが、音質はとてもよい。それどころか、録音場所の音響効果でバスが甘く響き、それに絡むボニファッチョのソプラノもかわいいくてすてきだ。ときにコミカル、ときに可憐なその歌声には魅了されてしまう。二人のレチタティーボのやり取りも楽しい。

ハイドン チェロ協奏曲 by Academy of Ancient Music

Academy of Ancient Musicによるハイドンのチェロ協奏曲、第一番と第二番の録音。チェロはChristophe Coin、チェンバロはクリストファー・ホグウッド(Christopher Hogwood)。

ソロも録音もすばらしく、ピリオド楽器ファンに自信をもっておすすめできる。とくにチェロ好きにはたまらないだろう。メロディーも有名で、一度聞いたら忘れられない。どこをとっても、これぞバロック音楽という作品だ。



ヴィヴァルディ ヴァイオリン協奏曲 ホ長調 『恋人』 by English Concert

ヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲『恋人』をはじめ、さまざまな協奏曲が納められた録音。演奏はピノック&イングリッシュ・コンサート。

彼らの録音は『四季』以外ほとんど知られていなかった大作曲家、ヴィヴァルディの真価を世に知らしめたものとして名高い。

RV271の『恋人』は夏の恋の喜びと平和を歌った曲で、『四季』と同じ頃に書かれた。ヴァイオリンのSimon Standageの演奏もすばらししく。録音もオーケストラとソロの音をくっきりと分けて聞かせる。

バソンやフルート協奏曲など、ほかにもさまざまな協奏曲がその後に続き、ヴィヴァルディという作曲家の才能を味わわせてくれる。特有の哀愁を持つ『ヴィオラ・ダモーレとリュートのための協奏曲ニ短調』RV540も聞き所。

いまでは、このアルバムを含めた全七枚の『Stravaganza-55 Concertos』が安く手に入るので、そちらを買うといいだろう。

マーラー:交響曲第10番 by サイモン・ラトル/Bournemouth SO

この演奏は、サイモン・ラトルが1980年にバーミンガム市交響楽団の音楽監督になる前に録音された。彼の最初の主要な録音であり、同時に彼の最高の演奏の一つ。クックの最後のバージョンに変更が加えられている。たとえば、第2楽章の終わりのシンバルクラッシュは成功しているが、フィナーレのクライマックスにおける余分なパーカッションなどは成功していない。

ボーンマスの弦楽奏者たちは、マーラーとクックの無慈悲な要求に対処するため、とんでもない時間を費やしたことだろう。全体を貫く緊張感がこの音楽のメッセージであることは間違いない。